極端宇宙天気研究会まとめ

2013年10月05日 13:43

これまで年に一度のペースで開催してきた「極端宇宙天気研究会」も第3回となりまして、その様子をまとめておきます。京都大学の宇治キャンパスで9月30日と10月1日に開催、37名(学生11名)の参加でした。そして次回以降のことは、名古屋大学の塩田さんと桂華さんにおまかせしました。新風に期待します!

 

 

【専門家向けの短いまとめ】

・第3回の発表資料はこちら。その他の研究会資料はこちら

・極端宇宙天気特集号への論文投稿はこちら

・キャリントンイベントの英語論文集はこちら

 

研究会で一番多かった発表は観測史上最大のキャリントンイベント(磁気嵐の規模は推定値でDst指数-850nT、ピーク値だと-1600nT)に関するものでした。単純に「数百年に一度のイベント」としてよいかな?(McCrackenがアイスコアで500年に一度級だと推定している?)1989年3月13日のハイドロケベック社の停電イベントが、観測の充実した1958年以降では最大の磁気嵐で、その規模はDst指数で-589nT、これは統計的に計算して60年に一度のイベント、というのが正確であることは私も確認したことがある。そういう感じで、さしあたりキャリントンの10倍を、人類が想定しておくべき未知の「数千年に一度」のイベントだとして、そのときの太陽風スピードや磁場の限界、そこから磁気嵐の限界をまとめてみます。

 

フレアで言うと、10^33ergという数字があたりまえに出ていました(たとえば前原さんの発表)。キャリントンフレアがX100程度のエネルギーらしい。この10倍のE=10^34ergが数千年に一度のフレア。X1000と覚えやすい。そして、これがコロナ質量放出(CME)の運動エネルギーの上限値だろう。少し計算してみる。*さっそく脱線だが、星の回転が桁違いに速いと10^35ergも出ている。この場合、たぶん1-10億年という年齢の太陽の磁場がどれくらい強いか気になる。

 

面倒な計算に入る前に、単位だけ整理する。SI単位系で計算する。1 erg = 10^-7 J 

あと太陽の人はガウスガウス言っているので参考までに 1 gauss = 10^-4 tesla 

フレアが3桁強くなるとCMEが2桁重くなる、という経験則から考えて10^14 kgを採用する。

このCMEはどれくらいのスピードになるか?

2E/m = 2x10^27 / 10^14 = 20 x 10^12

これの平方根がスピードだから、4.5 x 10^6 m/s = 4500 km/sになる。

 

密度は10^14 kgが0.1AU球に入ってるとして、

1AU = 1.5 x 10^11 mと陽子の質量1.67x10^-27 kgを使って、

V = 4x(0.1x1.5x10^11)^3 = 14x10^30 m^3

N=10^14 /(1.67 x 10^-27 x 14 x 10^30) = 10^14/2.4x10^4 = 0.4x10^10 m^-3 = 4000 /cc

距離の自乗で薄まるから、地球では40/cc。

 

最後に、CMEのガス圧を1000万度で計算しておく。P=N kp T, kp=1.38x10^-23

P=0.4x10^10 x1.38x10^-23 x 10^7 = 0.55 x 10^-6 Pa = 550 nPa

これとCMEの磁気エネルギーが同程度だろう。

2mu0x550x10^-9 = 8x3.14x10^-7x550x10^-9 = 1.4 x 10^-12

これの平方根が磁場だから、1.2x10^-6 tesla

距離の1.5乗で薄まると、地球では400 nT。

断熱で距離の1.3乗で冷えると、0.5x10^6 K。

 

これで磁気圏シミュレーションに使える太陽風パラメタがそろった。

つまり、V=4500 km/s、N=40 /cc、B=120 nT、T=0.5MK。

Burton経験則から、Dst指数で1時間に

4.5x4500x120x10^-3= 2.4 x10^3 nTほど発達する。

この発達の速さはツルタニ2003論文の図を連想するし、

たった1時間でVasiliunasの磁気嵐上限値になる。

継続時間は、幅0.1AUサイズが4500km/sで通過したことを考えると、

t=0.1x1.5x10^8/4500/3600 = 0.9 時間となるのも整合的。

 

だいたいこんな程度ではないでしょうか。専門家からのコメントを歓迎します。