「プラズマシート電離圏投影問題」研究会を開催します!

2015年09月10日 10:29
国立極地研究所研究集会「プラズマシート極域電離圏投影問題研究会」
 
会場:国立極地研究所3階セミナー室(C301)
 
期日:2015年9月17日(木)14時半 ~ 9月18日(金)16時まで
 
概要:
 極域観測は磁気圏ー電離圏系変動の結果を明らかにするものでありますが、結果が判ってもそれが原因に直結しないところが磁気圏物理学の困難です。一般に磁気圏物理学のような複合系の科学は、結果が先に判っている科学であり、結果が観測されるからこそ科学になる科学でもあります。これらの状況で、”極域で観測される磁場・プラズマ変動(sun-aligned arc、polar patch、quiet arc、initial brightening、Pi2、WTS、AEJ、FAC等)が磁気圏のどの構造に対応するか”、すなわち投影問題は磁気圏物理学の最重要課題となり、これを解明することは諸変動の原因を特定することに等しいという事になります。
 対応を確定するには磁力線・電流線のトレースが不可欠ですが、観測からの投影では沿磁力線電流(FAC)は磁力線と完全に重なる、磁場モデル自身が推定である、というような制約があります。その結果、推定には常に不確定が残ります。最近グローバルシミュレーションの解像度を上げると、極域観測全体がよりリアルに再現されることが分かってきました。ここでは磁力線・電流線のトレースが可能であり、ダイナモとシアーの要請を満たす投影こそが、正解を与えるという指針を与えます。すなわち、FACはforce freeであり、シアー運動と一体でなければなりません。FACは磁気圏の運動を電離圏に伝えるものであり、伝えようとしている運動(対流)がどのようなものであるかを知る必要があります。FACが磁場垂直電流に接続されるところには、ダイナモが存在し、ダイナモではエネルギー変換が行われ、どのエネルギーからどのエネルギーに変換が起こるかが、ダイナモ内部の力バランスで決まります。シミュレーションからこのような解析が可能となってきました。
 極域観測を理解するには、シミュレーションを参照することが必要です。またシミュレーションを研究するには、極域観測を知る必要があります。相互の交流を行い、互いが現状を良く知ることをめざして研究会を行いたいと思います。
 
連絡先:田中高史(九州大学名誉教授) tatanaka@serc.kyushu-u.ac.jp
    片岡龍峰(国立極地研究所)  kataoka.ryuho@nipr.ac.jp
 
プログラム:
 
9月17日(木)
 
1430~1700 田中高史(九州大学)レクチャー・討論会
 
磁気圏理論&コード解説(希望に応ずる)と、参加者の研究の進捗を自由に発表・相談する会、ならびに、伝統的に信じられている投影構造は果たして本当に正しいか、各人が疑問に思っている投影構造は何か、についての討論会。
 
1700-1730 鷲見治一(アラバマ大)「ボイジャー1号観測とシミュレーション解析による太陽圏外圏構造の研究」
 
1800~ 懇親会@立川ビアホール
 
 
 
 
 
 
9月18日(金)
 
0900-0915 尾崎直紀(電通大)「IMAGE FUVとSuperDARNによる極域ジュール加熱率と沿磁力線電流の導出」
 
0915-0930 木村洋太(電通大)「極冠オーロラの運動メカニズム再考: 2 台の全天カメラと短波レーダ」
 
0930-0945 細川敬祐(電通大)「極冠域電離圏のモフォロジー」
 
0945-1000 坂翁介(Office Geophysik)「M-I coupling associated with N-S aurora」
 
1000-1015 菊池崇(STE、RISH)「電離圏非圧縮性の物理」
 
1015-1030 片岡龍峰(極地研)、糸屋覚(JSF)、内田ヘルベルト陽仁(極地研)「高解像度オーロラ撮像観測の速報」
 
1030-1045 内田ヘルベルト陽仁(極地研)「オーロラの残像に見られる上部電離圏プラズマの複雑な高速流」
 
1045-1130 海老原祐輔(京大)「サブストームのシミュレーション:オンセット前オーロラ、初期増光、西方移動サージについて」
 
1130-1200 討論
 
1200-1300 昼食
 
1300-1315 田中高史(九州大学)「流れのシアーによる磁気圏変動の解析」
 
1315-1330 藤田茂(気象大学校)「南IMFでのnull-separator構造とDungey cycle」
 
1330-1345 渡辺正和(九州大学)「IMF By駆動トランスポーラーアークにともなう沿磁力線電流の統計的解析」
 
1345-1400 久保田康文(NICT)「グローバルMHDシミュレーションを用いた太陽風動圧の大きな急上昇に対する磁気圏応答」
 
1400-1415 岩木美延(九州大学)「磁場のない太陽風に対する地球磁気圏の応答」
 
1415-1500 総合討論