ワサビーズまとめ

2014年05月08日 19:57

本日、太陽フレアによる地球上での被ばく線量を予測する新手法のワサビーズ論文が受理されました!とにかく一段落ということで、ワサビーズについて簡単にまとめておきます。ことのはじまりは東工大で決起集会を行った2010年6月29日(火)です(下の写真、このあと居酒屋で・・・)。極大期を目前に、大フレアが起こった時の航空機の被ばく管理にも実際に役立つ宇宙天気モデルをメイドインジャパンで作りたいと考える研究者が東工大に集まり、科研費プロジェクトを始めました。みんな若かったあの頃から、はや4年。。

太陽の爆発現象から地球に向かって放出される太陽高エネルギー粒子(SEP)の影響は、最悪の場合には航空機パイロットの1年間の被ばく線量基準に達する恐れもあるため、宇宙天気予報でも最重要課題として知られています。しかし物理的に予測するのは複雑すぎて困難とされてきました。難しいからこそ組んで研究しよう!ということで我々は、この航空機被ばく線量を物理的に、かつ定量的に予測することを目的として研究を進めてきました。2011年と2012年の春の学会では、「太陽放射線被ばく」セッションを開催しました。この日本初の航空機被ばくの宇宙天気予報セッションの記録がこちらです。

 

Kataoka, R., T. Sato, and H. Yasuda (2011), Predicting radiation dose on aircraft from solar energetic particles, Space Weather, 9, S08004, doi:10.1029/2011SW000699.

 

結局NICTの久保さんにも助けて頂いて、次のような3段階のモデル計算を行うことにしました。

 

1.地球軌道へ飛来するSEPスペクトルの時間発展プロファイルをFocused Transport Equationの解から推定し、静止軌道衛星の観測データで補正をかける。

 

2.磁気圏モデル磁場中のプロトン追跡を行い、任意の緯度経度における大気上端でのSEPスペクトルを得る。

 

3.任意高度における被ばく線量を、大気上端の任意のSEPスペクトル形状に対応したモンテカルロ空気シャワーによって計算する。

 

上記の3段階計算を用いて、過去に発生した最高エネルギーSEPイベントについて、地上の中性子モニター観測との比較から定量的な検証を重ねることで、最高エネルギーSEPの宇宙天気予報システムWASAVIES (WArning System for AVIation Exposure to SEP) の開発に成功しました。論文が幾つか出版されています。留まる事のない今後の発展をお楽しみに!

 

1.被ばく予測モデル・ワサビーズ

Kataoka, R., T. Sato, Y. Kubo, D. Shiota, T. Kuwabara, S. Yashiro, and H. Yasuda (2014), Radiation dose forecast of WASAVIES during ground level enhancement, Space Weather, in press, doi:10.1002/2014SW001053.

 

2.背景太陽風モデル

Shiota, D., R. Kataoka, Y. Miyoshi, T. Hara, C. Tao, K. Masunaga, Y. Futaana, and N. Terada (2014), Inner heliosphere MHD modeling system applicable to space weather forecasting for the other planets, Space Weather, 12, 187-204, doi:10.1002/2013SW000989.

 

3.空気シャワーモデル

Sato, T., R. Kataoka, H. Yasuda, Y. Seiji, T. Kuwabara, D. Shiota, and Y. Kubo (2013), Air shower simulation for WASAVIES: Warning system for aviation exposure to solar energetic particles, Radiation Protection Dosimetry, doi:10.1093/rpd/nct332.