ノルウェー滞在記録

2014年02月24日 08:08

ノルウェーに入りました。できるだけ、記録します。

 

2月23日(日)、曇り。移動日。朝からタクシーを呼び、高速バスでヒースロー空港へ。ロンドンからの飛行機は遅れ、オスロでの乗り継ぎが1時間を切っていて、ドタバタとよくわからないままトロムソに到着。雪はあるがサウサンプトンよりも暖かい?まだ日本人はみかけていない。空は厚い雲で覆われていてオーロラは見えない。

 

2月24日(月)、曇り。雨の予想。最高気温8度。これではロンドンと変わらない。Thon Hotel Polarで朝7時に飛び起きて、いろいろ食べてみる。朝9時、ビヨルンが迎えに来てくれた。10分くらい丘を上ってオーロラ観測所へ到着。オフィスに案内してもらうと、まず目に止まるのが電動で上下に動く巨大な机!既に私のあごくらいの高さまで上がっている。この机は眠くなったら立って仕事できそうで、かなり気になる。正直言ってこれはぜひ私のオフィスにも一つ欲しいが、いかにも日本では売ってないシロモノで、これ以上は目の毒なので見ないようにする。とにかくフリッカリングの物理から、立体視測定の精度の上げかた、ハウルのデータフォーマット改良まで、午後1時になると大体の議論が終了。ランチにラザニアおごってもらった。午後ぶらぶらっと研究所の同僚に紹介してもらい、ついでにプラズマラボを見せてもらう。Stormer(すトぇるまる)、Birkeland(びるけラんと)の言い方を習う。アクセントはカタカナのところ。午後4時、そろそろ電離圏を加熱しに行くべ、人工オーロラ見たことあるかい、とか話しながら大雨の中EISCATサイトへ。途中スーパーに寄る。ピザが1500円くらいであることをチェック。これなら店で5000円でも不思議ではない。EISCATの看板を左折すると、巨大アンテナが見えてきた。宇宙へ波動砲発射まで30分前、ということで戦闘モードに入るビヨルンとマイク。とりあえず私は邪魔しないように隅っこで小さくなって気配を消し、別な宇宙天気の仕事に集中。2年前くらいまではマイクがオルガン奏者のように右手と左手と足で宇宙を加熱していたとか。ときおり御免よとデータをチラ見する限り、電子はきれいに加熱されているようだ。イオンの反応は微妙。天気が悪くて人工オーロラが見えないのは本当に残念。それにしてもアラスカのロケットといい、ノルウェーの人工オーロラといい、面白いほどチャンスを逃しまくっている2014年。日が暮れて1時間ほどでF層の電離度が再結合で下がってきて送信周波数がこれ以上下げられず加熱を続けられない、と困っていたら18時ごろからE層が出現。暇つぶしに、ビヨルンの関連論文を引き合いに出しては質問攻め。E層も弱ってきて撤収。パスタが美味しかったダウンタウンのレストランの美人。明日は10時からセミナー。みんな来るからとハードルが上がりすぎているところで寝ます。

図1:マイクとビヨルン、宇宙を加熱する30分前。

 

2月25日(火)、曇り。朝3時にX4.9フレアの発生に気づいてしまって眠れない。ビヨルンが朝9時に迎えに来てくれた。DAWとEMICとcavityの話をしてハイテンションのまま朝10時のセミナーへ突入。1時間の議論。おびただしい数の質問をくぐりぬけて、マイクとビヨルンとは新しい共同研究の作戦(加熱域の高速撮像)も出来て、終わってみればすっきり。マグナルの部屋に移動し、100年前のストルマルの観測機の現物や論文や本、データを大量に見せてもらった。オーロラの高度測定はじまりの場所でオーロラ立体視のセミナーをやってたことをモノで実感する。またビヨルンにランチをおごってもらう。ディナーまでおごってもらう。割り勘にする隙を与えないビヨルン。もう日本に呼び出してごちそうするしかない。午後は話を詰められるだけ詰めて、面白い論文ネタ(5577高速撮像)も発掘できたし、今後の共同研究が本当に楽しみです。

図2:オーロラ立体視セミナー直後にマグナルが見せてくれた100年前のカメラ。なんとストルマルがオーロラ三角測量に使っていたもの。

 

2月26日(水)、曇り。朝6時半に朝食。荷造りをしてタクシーを呼んで、トロムソ空港へ。最北の地スバールバルに向かう。飛行機の中、そういえばトロムソには最北のブルワリーがあったのでは!と思い出したり。午後2時半ごろ、ロングヤービン空港に到着。しっかり雪が降っていて、まあまあ寒い。フレッドが迎えに来てくれていた。太陽が出てきたから、もう気分は休みだとか言ってる。発電所を通って5分ほどで大学。UNISと呼ばれている。カギをもらって登録を済ませ、ゲストハウスの部屋にスーツケースを置く。ビールは裏のホテルで飲めるから!とだけ教えて逃げていくフレッド。よくわからないまま歩いて大学に戻ってオロオロと探検していたら、普通に仕事中のフレッドを発見。コーヒーを入れてもらって、ダグも巻き込んで、新しいオーロラ観測などについて簡単な情報交換。明日は朝10時ごろからコーヒー会議で、昼はセミナーで話す予定。明後日は、観測所に連れていってくれるとのこと。のどが痛い。とにかく早めに寝ます。

 

2月27日(木)、雪。朝9時すぎ、UNIS3階にあるNIPRのオフィスへ入場。そういえば、ここの机も電動式で上下するようで、これはノルウェー共通かもしれない!10時のコーヒータイムで、フレッドとダグにいろいろ最新データを見せてあげた。廊下の向こうでは、きのこの研究者が爆音ノリノリでドア解放で研究している。11時半にグループのみなさんとランチ。いきなり45分セミナー(https://www.unis.no/50_INTERNAL/5030_Lunch_Seminar/lunch_seminar_program.htm)。学生からたくさんの質問。セミナーに来て頂いた日本人アーティストの妹尾さんにラストのカッコントウをもらって、その場で飲んで、すぐにフレッドのラボ見学へ突入。液晶フィルタ、積分球、ドローン、そして3Dプリンタ!3Dプリンタで遊びたい誘惑に駆られつつ振り切って、ラボ見学が終了。太陽風データをチラ見すると、衝撃波が見えそうな予感。そういえばオーロラを見てなかったから今晩はチャンス。なんでも寿司屋があるということを教えて頂いて、明るいうちに町まで探検。寒い。本当に寿司屋があった。たぶん島を滞在している日本人全員と遭遇。お寿司屋さん2人と妹尾さんと一緒に暗い海辺へ移動。オーロラオーバルの輪の中から磁気嵐主相のオーロラを初めて見ました。フェアバンクスで見てきたオーロラとは全然違う。南の空の山並みがくっきりして空が明るくなってきたような?と見ていると、異様に背の高い光の柱が次々と何本も宇宙に伸びていきました(ツイッターに写真をアップした)。写真に撮ると真っ赤ですが、目ではうっすら赤く見える感じ。たぶんマイナス10度くらいだけど私は寒くて2時間も我慢できず、あとで誰かが車で迎えに来るという元気ハツラツの3人を海辺に置き去りにして、私だけゲストハウスへ撤退。

図3:フレッドの光学実験室@UNISの3階。

 

2月28日(金)、快晴。今日は万が一EISCATサイトで徹夜になってもいいように備えて、少し遅くUNISに歩いて出勤。なんて美しい場所なんだろう。トナカイがどこにでもいる。既にコーヒータイムでくつろぐDagとFredと話しているうちに、新しくて面白い共同研究の話が煮詰まったところで、ついでにポスドクのMargitにも奇襲。Fredと観測所へ。まずは腹減ったということでタイ料理を食べる。観測所までは10キロくらいの道のり。かなり近い。太陽を久しぶりに見た、とハイテンションのFred。途中で雪上車に乗り換えて道なき道を駆け上がる。EISCATレーダーサイトの裏にグイグイまわり、この研究調査旅行のカギとなっているASKカメラをとうとう見学。R2D2のようにかわいすぎるフォルムとたたずまいに、遂にここまで来たなあという感動。そしてさらに観測所KHOへ雪上車でぐいぐい上る。勢い余って観測所も通り越して、雪上車の限界まで無駄に頂上を目指すFred(その最高到達地点からの眺めが図4)。観測所は2008年に作ったらしく、もう何もかもが完璧なまでに揃っている。シャワーもあって住める。というか私はここに住みたい。お前のハイスピードカメラ持って来い、年間使用料は2万クローネだけど、あとそうですねキャリブレーション費用になりますと、、とテヘペロ的なFred。まじでspecialなスペクトル観測を同時に用意してくれるとのこと。それにしても、もっと儲けてもいいんじゃないかな、と思いました。無数の美しい光学観測機器のセッティングを見ることができました。とんでもないところに来た。(次週、ストックホルム編につづく)

図4:本日最高到達地点からの観測所KHOとEISCATレーダーの眺め